『からいはうまい アジア突撃極辛紀行』

目黒ええと、それでは『からいはうまい』。文芸ポストに連載した食エッセイで、カバーには「アジア突撃極辛紀行 韓国・チベット・遠野・信州編」とある。ようするに、辛いものを食べ歩いた記録だね。2001年7月に小学館から本になって、2004年11月に小学館文庫と。写真もかなり入った本です。

椎名写真は全部ヤマコーさんか。

目黒いや、チベットは椎名の写真だね。あとの韓国・遠野・信州は山本晧一さんです。ということは、チベットはヤマコーさんが行ってないんじゃないかなあ。

椎名韓国はみんなで行った記憶があるな。

目黒リンさんにPタカにヤマコーさんに、そして編集のアベちゃんに椎名と五人だね。ソウルのIMF食堂で、ガイドを含めて6人で7000円というのは安いよね。だってキムチ鍋にマッカリにチヂミ、タコキムチ炒めにうどん、しこたま食って飲んで7000円だよ。

椎名キムチ鍋は4人で1000円だものな。

目黒そのキムチもおいしそうだ。たとえば、こんな感じ。

一同卓上のキムチをバリバリ頬張りマッコルリをぐいぐいと飲む。キムチを食べたあとに、とろりと白濁し甘味と酸味がほどよく混じり合ったマッコルリを口に含むと、さっきのキムチの辛味が急速に甦る。その辛味が心地よい。口中全体に辛味が広がって、どうだまいったかと言っているかんじだ。

うまそうだよなあ。「辛いけどうまい。うまいけど、辛い」とはこの本の中に何度も出てくるフレーズだけど、本当にそんな気がしてくる。ところで、椎名は若いころから辛いものが好きだったの?

椎名そうだよ。

目黒それは知らなかった。ええと、辛い食べ物とは関係ないことを先に言うと、チベットの民家には暖房がないので、部屋の中でもコートを着ている、というくだりに驚いた。

椎名最近では電気ストーブを使う家も増えてきたけど、家庭の電気容量に限りがあるから、そんなには使えない。

目黒ホテルでも従業員が部屋に電気ストーブを持ってきてくれると書いてあるね。

椎名全館暖房ってないからね。

目黒あとは、チベットで麻雀が流行っていたというのが面白かった。

椎名白発中の三元牌がない。ソーズ、マンズ、ピンブのどれか2種で手を作る。3種類入ったら失格。点棒もなく、一局ごとに金が賭けられて、勝った人間がその場の賭金を巻き上げる。

目黒ポンもチーもリーチもないんでしょ。面白いのかなあ。

椎名面白いから流行っているんだろ。

目黒ふーん。ま、いいや。ええと、知らないことがたくさんあったので、この本は個人的に面白かった。トウガラシの原産地は南米のボリビア中部であるとか、ワサビは日本原産であるとか。

椎名ワサビは眉間にツーンとくるだろ。あれが韓国人はだめみたい。

目黒あんなに辛いものを食べている国民なのに、トウガラシとワサビは別だということだね。

椎名どういう辛さを好むのかは民族によってかなり違うんだね。

目黒あとは巻末の座談会が面白い。たとえば「世界でもっとも辛いものを食べる国はどこですか」という太田和彦の質問に、小泉武夫さんは「ミャンマー」と断言しているのが興味深い。なぜならミャンマーは暑いと。インドより暑い。だから辛いものがないとやっていけないっていうんだね。発汗作用が出来ないし、食欲が出ないし、働く意欲が湧いてこないと。それから辛いものの説明が続くんだけど、これがいかにも辛そうで。

椎名翌日肛門が痛いっていうんだからな(笑)。

目黒そんな思いまでして食べたくない(笑)。

椎名二度辛さを味わえる(笑)。

目黒小学館文庫の解説を、斎藤海仁が書いているけど、この解説はうまいなあ。タイトルは「からいはホントにうまいのか」っていうんだけど、海仁は辛いのが苦手なようで、その立場から書いている。17ページに及ぶ長い解説で、いろんな情報がてんこ盛り。たっぷりと読ませて飽きさせない。

  

 

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